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2015.6.26 | ミントの会

「ミントの会」6月の集いを開催しました

「ミントの会」6月の集いを開催しました
 当院患者会「ミントの会」の6月の集いを6月20日、当院2階待合ロビーで開催しました。
 講演は乳がん認定看護師の堀田美紀主任が「乳房再建について」、白井秀明統括管理部長が「超音波のお話」、浅石和昭理事長による「トリプルネガティブ乳かんについて」の3題を行いました。パネルディスカッションは、3人の患者会メンバーがパネリストとなり、それぞれの体験や経験など、活発な意見交換が行われました。

 乳がん認定看護師の堀田美紀主任は、インターネットで乳房再建を検索するとさまざまな情報が氾濫しており「いかに正しく情報を理解するか、患者さんは大変」と指摘。誤った情報に惑わされ無いためには、用語や方法を正しく理解し、自身のケースに当てはめて理解できることが大切です。
 乳房再建の種類は一次再建(乳癌の手術と同時に再建)、二次再建(乳癌の治療がひと段落してから再建)、一期再建(一回で再建手術が終了する方法)、二期再建(二回で再建手術が終了する方法)の4つがあることを説明。
 一次再建(同時再建)のメリットは、手術回数が少ないこと、術後の乳房の喪失感が無い、費用が抑えられることを挙げ、デメリットは考える時間が少ない、病状や進行度により行えない場合もある、としました。二次再建のメリットは再建方法をじっくり吟味できる、術後合併症率が下がるとし、デメリットは手術回数が増えることを挙げました。
 乳房再建方法については、腹部や背中の筋肉を利用したり、脂肪組織につながった細い血管ごと移植する「自家組織を使う方法」と「シリコンを入れる方法(インプラント)」について、それぞれ詳しく説明。当院もインプラントの際に必要なエキスパンダー認定施設となっており、何れの乳房再建術においても、経験豊富な形成外科医と連携して再建術を行っています。
自家組織、インプラントそれぞれのメリット、デメリットについても詳しく解説し、乳頭の再建、乳輪の再建、人工乳頭についても具体的な説明を行いました。再建した患者さんの感想も紹介し、再建を考えたときには「十分に考えて、納得して決めることが重要」と結びました。
 浅石理事長は「当院でも希望する患者さんには同時再建を行っていますが、医師に勧められるままに同時再建を選択することが正しい訳ではなく、いざ同時再建を受けてみると自分が思っていたのと違う結果になっていることもあります。後悔しないためには、同時再建が最近の流れというような医師の言葉に惑わされず、じっくりと時間をかけ、自分が納得した時期に受けることが大切」とアドバイスします。

 白井秀明統括管理部長は日本超音波検査学会評議員、日本乳腺甲状腺超音波診断会議常任理事、北海道乳腺超音波研究会代表世話人などを務め、第25回日本乳腺甲状腺超音波診断会議会長を医師以外で初めて務めた国内屈指の超音波検査士として国内の乳癌超音波検査の発展に貢献しています。最先端の超音波検査の動向となぜ超音波検査が必要であるのかを解説しました。
 日本人女性の癌罹患率をみると、2011年時点で乳房の癌患者数は推定81,319人で、胃や大腸、肺、子宮などを抜き最多。日本人女性の14人に1人は乳がんになる数値です。しかも罹患数の伸び率は群を抜いており、増加傾向が続いています。
 また、年齢別の罹患数をみても、40歳から69歳で乳がんが第一位となっており、乳がんは40歳からピークに向います。「欧米人の場合は50歳代からピークに向かいますが、日本人の場合は40歳代からと早いため、40歳代から検診を受ける必要がある」と白井部長は指摘します。
 マンモグラフィ検査と乳腺密度の関係についての解説では、乳房に占める乳腺の割合別に、乳腺数が数パーセントの「脂肪性」、乳腺の割合が10から30パーセントの「乳腺散在」、同じく50から60パーセントの「不均一高濃度」、同80から90パーセントの「高濃度」の各乳房のマンモグラフィ画像を示し、乳腺の濃度別に癌を発見しやすいもの、発見が難しいものがあることをを分かりやすく解説。
 とりわけ「不均一高濃度」と「高濃度」の乳房は40歳から49歳で76.3パーセントに上ります。この年代のマンモグラフィー単体の感度は「不均一高濃度」で60パーセント、「高濃度」では50パーセントとなっており、特に癌を発見するのが難しくなっています。
 「不均一高濃度」と「高濃度」の乳房は、このように若い人に多く、授乳歴が少ないか無い人にも多くみられます。また、乳がん経験者でもホルモン補充療法の期間が長くなっている人にも多くみられます。
 乳がん検診はマンモグラフィ検査が基本とされていますが、乳腺密度が高い割合となっている40歳代では限界があることが指摘されていますと説明。
 当院では、開院時からマンモグラフィと超音波による検査を行ってきました。
 白井部長は「現在、乳がん検診でマンモグラフィにエコーを併用する検査と併用しないマンモグラフィ単体の検査を比較する国家プロジェクトとしてJ-STARTという検証が行われています。先に行われた栃木県での結果では、エコーを併用した場合の上乗せ効果は40から44歳で30パーセント、45から49歳で28パーセント増加しています。また、手術後の経過観察では、局所再発乳がんの94パーセントはエコーで発見されています」とエコー検査の有効性を解説。
 「超音波検査は痛みも無く、安全で、誰でもが受けることができる優れた検査ですが、実際には検査に当たる技士の能力に左右される部分が多くあり、毎年のようにメーカーから発売される最新の機器を導入しても使いこなすのが難しいのも現状です。最新ばかりを売り物にするケースが見受けられますが、内容が伴っていなくては全く意味がありません。当院でも乳房に特化したエコーを導入しており、あわせて開院以来積み重ねてきた技法を定着させており、安定した検査を行っています」と浅石理事長は話します。

 浅石和昭理事長は、乳がん細胞の発生と生体防禦の仕組みについて、イラストを交え分かりやすく解説。癌化する仕組みを説明しました。
 乳がんの増殖に関係する2つの因子として、1)女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)受容体、2)HER-2蛋白を挙げ、この2つの因子を持たないものをトリプルネガティブ乳がんと説明。
 トリプルネガティブ乳がんは、全乳がんの10から15パーセントを占め、ホルモン療法や抗HER-2療法の効果がない、術後2から3年位の再発が多いなどの特徴を示しました。抗がん剤の効果が期待できる、補助化学療法が使用されるなど、治療面についても紹介し、抜群に効果が上がるものから、全く効果が上がらないものまであり、様々な性質を持つ集団―、との説明を行いました。
 このトリプルネガティブサブタイプの分類は「基底細胞様1」「基底細胞様2」「免疫調達系」「間葉系」「間葉系幹細胞様」「管腔アンドロゲン受容体」とし、それぞれ解説。
 新規治療薬が期待できるタイプとして、A-1 BRCA-1またはBRCA2遺伝子に変異のあるものは、DNAを破壊するタイプの抗がん剤や分子標的治療によりがん細胞を死滅させる方法(PAP阻害剤で第3相試験進行中、サンアントニオ=SABLS2014での比較試験でカルポプラチンがドセタキセルに比べ有意に有効)、A-2 免疫細胞の暴走的な活性のブレーキシステムとして細胞表面に免疫チェックポイント分子が存在するものは、この分子を破壊し免疫細胞の暴走的な活性でがん細胞を死滅させる方法(SABLS2014での第1相試験で、PD-1阻害剤が再発・転移トリプルネガティブ乳がんに有効の可能性があるとの報告)、A-3 アンドロゲン(男性ホルモン)受容体が多数発現しているものは、前立腺がん治療薬は有望ではないかと推測されており、このタイプは情報伝達経路(P13K)の活性化や変異を伴っており、分子標的治療薬の開発が期待される―と、乳がん治療の最新情報を提供。
 トリプルネガティブ乳がんの治療展望として、1)今まで一括りにされてきたが、たくさんのサブタイプが分かってきたことで、遺伝子変異や病理検査の進歩が期待される、2)各因子を攻撃する新薬が開発中であるが、開発時間と費用も大変、3)異なる癌種に使用されてきたものの中に有効な薬剤があることが分かってきたため、保険診療の認可が出れば使用可能に、4)サブタイプによっては、思いがけない治療法が効くことが期待できる―と、今後のトリプルネガティブ乳がんの治療に期待を寄せました。